文学フリマ東京、ありがとうございました

第三十一回文学フリマ東京、出店者として参加しました。ご来場の皆様、本をお手に取ってくれた皆様、購入してくれた皆様、本当にありがとうございました。

もうちょっと早く何かしら書きたかったんですが、原稿に精神力を注ぎ切ってしまったのか作文パワーが枯渇しびっくりするほどなんにも文章になりませんでした。今も微妙です。今も微妙ですがとりあえず肉体的な疲労のピークからは脱出してだいぶ現実にも戻ってこられたので、わずかに回復した作文パワーを絞り上げながらこのブログを書いております。

本サークル『エクセレント此岸』は今回が初出店でした。初出店どころか私ももうひとりも本を作ったこともなく、勢いで出店申し込みしてその後すべて手探りという状態で原稿を書き、印刷所を探し、締切を確認し、本のデザインを決め、適切な形式で入稿し、同時並行で通販のやり方を調べてサイトを開設し、ブース設営に必要なものを調べて購入し、本の値段を決め、通販の匿名配送のやり方を調べ、収支報告をまとめ、となんとかここまでやりきれました。

本をひとつ書いて売るのに必要なのはぜんぜん原稿だけじゃなかった、という怒濤の意思決定&新規学習スケジュールとタスクの山、しかももうひとりは事務仕事超苦手のため当人の原稿以外のタスクはすべて私が引き受けるという半ばプレイングマネージャーのような状態で、「ああ人にやれっていわれたことをやるだけの立場ってなんて楽なんだろう」とまさにそういう立場で会社員やってる身をありがたく思ったりしていました。

正直我ながらよくやったと思うし達成感がすごいです。と同時に、初めてやることを滞りなく進められるかどうかの緊張感はそんなにすぐに抜けるもんじゃないとも実感しております。文フリ終了後も通販の第一便が無事到着するまでぜんぜん落ち着かず、ここ2日くらいでようやく元の生活に戻ってこられた感じですね。ここに戻るまでに「メイトーのなめらかプリン 焦がしキャラメルソース」を6個くらい食べる必要がありました。

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文学フリマ当日はてんやわんやのうちに時間が過ぎ去り、一段落した今となっては「あれは一体なんだったんだろう?夢か?」みたいな感覚になっています。
うちのサークルは本を印刷所から直接搬入してもらったため、ブース設営のため入場して初めて自分の本とご対面となったのですが、出店初心者、初めての自分の本を手にする感動に浸る前に設営に必死です。設営完了して一息入れてようやく感動の時間、と思いきやすぐ開場して人がどんどん入場してきて「うわー!」となり、そこから先は閉場まで怒濤でした。初心者、テンションの定まるところを知らず。

自分の本ができた。自分のブースができた。こういったひとつひとつをじっくりかみしめる余裕などないのが現実と知りました。人生は常に走り続けているんだ。

正直うちのブースには知り合いくらいしか来ないと想定していたのでそんなに売れないつもりでいましたが、蓋を開けてみると想定以上に多くの方がブースに立ち寄ってくださり、私たちの本を買ってくださり、もう何が起きたのかよくわかりません。現実すごい。本当にありがとうございます。

開場後初めて私の本を買ってくださったのは私の知り合いではない方でした。見本を立ち読みして1冊買っていってくださいました。最初に来るのは絶対知り合いだと思っていたので予期せぬ展開にもうひとりと手を握らんばかりに感動し、その後しばらく「あんなん絶対文芸の神やん。祝福やん。もうやめられんわ本出すの」みたいなうわごとを繰り広げていました。

あの方はもしかしたらどこかで私のことをご存じだったのかもしれませんが、私と直接面識のない方が、私が出店すると知ってわざわざ買いに来てくださったとしたら大感激ですし、そういうわけでもなく当日たまたま立ち読みして気に入って買ってくださったとしたらそれも大感激ですし、いずれにせよ大感激ですし文芸の神の祝福に他なりません。どちらに足を向けて寝れば大丈夫でしょうか。あの瞬間はもうずっと忘れないと思います。

その後いつも仲良くしてくれている皆様も来てくださり、こちらもとてもとてもありがたかったです。何しろこのコロナ禍の中です。運営の方々も可能な限りの対策をしての開催となりましたが、人が多く集まる場所である以上リスクはゼロではありません。そんな中で、貴重な休日に交通費をかけて会場まできてくださり、お金を出して私たちが書いた本を買ってくださる。どうしたらいいでしょうか。私に何ができるんでしょうか。

これが自分が買う立場なら「え~買いに行くよ~行く行く~」ですむんですが、自分が買ってもらう立場になるとぜんぜんそんな気軽なもんじゃなくなるのがすごいですね。買ってもらうありがたみのすさまじいこと。こちらも本当にありがとうございます。
また、このコロナ禍で長らくお会いできないままだったので久しぶりに会えたのも嬉しかったですね。人に直接会えるのがこんなにありがたい世界になってしまうとは。気兼ねなくまた一緒においしいお店に行ける日が来ると信じてまだしばし頑張ります。

エクセレント此岸のもうひとりであるかせさんは敬愛する詩人さんについて愛溢れる考察本を書きましたが、当日なんとその詩人さんがブースに来てくださり本を買ってくださるという人生史上稀に見るサプライズに遭遇、うわごとのように「なんだろう現実って」「すごい」「現実」「夢かな」と繰り返し私以上にたいへんなことになっていました。
私はまだ距離があるのでかせさんよりは平静を保って(いるフリをして)いましたが、かせさんがその詩人さんをどんなに敬愛しているかよく知っている身であり、同じく敬愛する人がいる身として、このとんでもない現実をどう乗りこなせば乗り切れるのか考えてみても答えが出ず、また自分の身に起きたとしたら……と一瞬想像しただけで寿命が縮みそうなので考えるのをやめました。たいへんな現実をひとりで受け止めたかせさんはすごい。

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文学フリマの5時間のうちに、今まで自分たちの身に起き得なかったことがたくさん起こりました。そのひとつひとつがとても大きくて、なかなか自分の身に落とし込んで言葉にするのが難しくもあるのですが、ひとえに「やってみてよかった」に尽きます。何事もとりあえず動いてみたら何かしらの結果は出るものとはいえ、今回ほど想像を超えたところに着地する経験は大人になってからは限りなくレアで、やっぱり大人も日々何かしらやってみるものだなとあらためて思いました。

本を作って売るという一連の流れの中で、実際にやってみてうまくいった点やスキル不足を感じた点を次回に生かし、また楽しく本を作って出店したいと思っています。エクセレント此岸も生まれたばかりなのでこれからどんどんよいものにしていきたいですね。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

そしてこの状況下で開催に踏み切り、当日まで可能な限りの対策を周知して実行してくださった文学フリマ運営の皆様には本当に頭が下がります。事務局からいただく丁寧なご連絡を見て、このような対応をする運営なら信頼して大丈夫と参加の腹を決めましたので、一連のご対応に非常に感謝しております。準備から当日まで本当に大変だったと思います。一出店者としてとてもありがたく思っております。

そして通販のほうもありがたいことにこちらもたくさんご購入いただいて「現実」「すごい」となっております。自分たちの本が物理的な距離を移動してどなたかのお手元に届くというのもまた不思議な心持ちですね。こちらは顔が見えないぶん、梱包時に「楽しく読んでほしいなー」と祈りエネルギーを多めに込めております。

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文学フリマ当日と通販と、この1週間は自分たちの本を買っていただける喜びとありがたみの中で過ごしておりました。しかしこの後には読んでもらえる喜びと、もしかしたら感想をいただける喜びが待っているわけで、本を書くってすごいですね。これは祝福ですよ。やめられない。

ということで私もかせさんも、自分ながらにお楽しみいただける本を作りましたので、Twitterなどでもお気軽にご感想などいただけるととてもとてもありがたいです。「書いた本読まれた」「現実」「すごい」となります。

Twitterといえば今回いよいよ我らもエゴサーチの権利を得たんですが、我々の筆名も書籍名も『かせ』『かまりえ』『それとはなしに』『めぐりめぐりて』とどれもサイコーにエゴサに向かないのでもう『エクセレント此岸』に頼るしかありません。エゴサのことをまるで考えていませんでした。いったい何年Twitterをやっているというのでしょうか。

そんな感じのエクセレント此岸、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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